ラーメンのアンケートから来年の展望とかまで

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 2009/11/12付の、こういう↓記事を見た。

ラーメン屋のラーメンにいくらまでオカネ出せる? 1000人アンケート実施
http://excite.co.jp/News/column/20091112/Getnews_37719.html

日本中に点在しているラーメン屋。そして、日本中の人たちが愛しているラーメン。最近は行列ができるラーメン屋も増えているようで、デートにラーメン屋! なんてことも恋人たちにはよくあるシーンらしい。でも、最近のラーメン屋のラーメンの価格が高騰しているのも確か。1杯500~600円が普通と思っていたら、800円や900円、なかには1500円なんてラーメンもあるようだ。

ということで、日本全国のインターネットユーザー1000人に「ラーメン屋のラーメンで「高い」と感じる価格ラインは?」というアンケートを実施! どんな種類のラーメンでもいいので、「ラーメンにはこれ以上払えない!」という価格ラインを調査したぞ! その結果は以下の通り。

<ラーメンに払える金額>
1位 800円までなら払う
2位 1000円までなら払う
3位 700円までなら払う
4位 850円までなら払う
5位 900円までなら払う
6位 600円までなら払う
7位 750円までなら払う
8位 650円までなら払う
9位 950円までなら払う
10位 1200円までなら払う

(略)

 なるほどとも思う。金銭感覚もさほど違わない。

 こういうふうに、「このメニューならこの値段まで」という基準というか相場観は、強弱はともかく誰にでもある。客単価を上げたい店にとってはそれが壁でもあるわけだ。

 ......と、それはいいとして。

 しかしこのアンケート、あまりに大ざっぱすぎ。(^^;

 だって、記事の冒頭でも言っているように、ラーメン屋は「日本中に点在している」のであって、しかもアンケートに回答した人だって「日本全国のインターネットユーザー1000人」ってことなんだから、これまた「日本中に点在している」わけだろう。

 こんなもん、地域による物価の違いを無視して語ってもしょうがないじゃないか。

 この記事書いた人(調査した人)って、きっと東京の人なんだろうね。

 とはいえまあ、この結果は結果としてなかなか興味深い。

 「デートにラーメン屋! なんてことも恋人たちにはよくあるシーン」ということだが、こういう悲劇(「胃腸が元々弱いと知っている人」)もあるのでご注意を。

 あ、あと、

最近のラーメン屋のラーメンの価格が高騰しているのも確か

 というのは、何か具体的な根拠があって言ってるのかなぁ?

 いや、確かに一時期(2007~2008年にかけて)小麦粉の価格が高騰したことがあり、この時期にラーメン店の値上げが相次いだ(そしてその後もずっとその価格が維持されている)ことは事実なんだけども、そのことを言ってるのだろうか。

 というわけで、ついでなので近年の小麦の政府売渡価格の変化について確認しておく。

 輸入小麦は国内産業保護のために政府が一括購入していて、それを製粉業者に売り渡すシステムになっている。
 この売渡価格は2006(平成18)年度までは1年ごとの固定制で、ずっと大きな変動はなかったようだ。これが食糧法の改正(2006/06改正、2007/04施行)によって2007年4月から相場連動制に移行した。4月期、9月期と年2回(最終的には3回になるらしいが)改訂される売渡価格は、過去の一定期間における買入価格の平均値にマークアップ(関税に相当/政府管理経費及び経営所得安定対策に充当)を上乗せして決められるという。

 で、この相場連動制への移行から1年後、エラいことが起こったと。

 いくつか要因があるようだが、2005~2006年にオーストラリアで2年連続大干ばつが起きたことが主な要因となって、小麦の相場が高騰した。「相場連動制」というくらいで、小麦の売渡価格は相場に連動して急激に上がっていった。

 小麦売渡価格は2007年4月期から急激に上昇を始める。それまでほぼ横ばい(5銘柄平均47,820円/t[2006年度])だったのが、ピークの2008年10月期には5銘柄平均76,030円/tとなった。これは2006年度比で159%に相当する。わずか1年半で約1.6倍にも値上がりしたことになる。

★原料小麦の売渡価格の変遷

月期DNS1CWHRWASWWW5銘柄
平均
2006(平成18)49,27051,14045,92046,35044,97047,820
2007(平成19)
04月期
49,27051,14047,44048,66042,73048,430
2007(平成19)
10月期
54,19056,25052,17053,53046,99053,270
2008(平成20)
04月期
70,45073,13067,83069,59061,09069,120
2008(平成20)
10月期
77,50080,44074,61076,55067,20076,030
2009(平成21)
04月期
67,01071,89059,26064,14057,88064,750
2009(平成21)
10月期
51,60054,64046,81046,82047,46049,820

 なお、表内の略称は以下の通り。

略称産地銘柄用途
DNSアメリカ産(ダーク)ノーザン・スプリング主にパン・中華麺用
1CWカナダ産ウェスタン・レッド・スプリング主にパン用
HRWアメリカ産ハード・レッド・ウインター主にパン・中華麺用
ASWオーストラリア産スタンダード・ホワイト主に日本めん用
WWアメリカ産ウェスタン・ホワイト主に菓子用

 「日本めん」て何じゃろな。(^^; 「うどん・そば・そうめん・きしめん......」か。
 この↑表の「5銘柄平均」の変遷をグラフにすると、こういう↓感じ。●政府売渡価格(緑色)の方(ピンクは■政府買付価格)。


輸入小麦の政府買付価格と政府売渡価格の推移(主要5銘柄平均)
農林水産省「平成21年4月期における輸入麦の政府売渡価格の改定について」(平成21年2月24日)より


 このグラフには2009(平成21年)10月期の売渡価格は載っていないが、2009年10月期(つまり今)は5銘柄平均49,820/t。2006年度比104%だから、ほぼ2006年以前の状態に戻ったといえるだろう。

 これは原料小麦の政府売渡価格であって、これが製粉業者に売られて小麦粉に加工され流通することになる。原料小麦の大きな価格の変動も、メーカーがある程度かぶり、流通価格にはここまでシビアに反映されることはなかった。

 じゃあ実際、こういう小麦価格の変動が、どの程度ラーメンの原価に影響するのだろう?

 ラーメンの麺が1人前で200g、加水率38%と仮定して計算すれば、

 で、1人前のラーメンの麺に使われている小麦粉は約145gということになる。

 次に、ラーメン用小麦粉の中では比較的高級品である日清製粉の「特ナンバーワン」という製品でググってみると、このくらい↓の卸売価格で売られていることがわかる。

日清製粉 特ナンバーワン
販売価格(税込): 25Kg/袋  4,800 円

 25kgで4800円ということはつまり192円/kgということで、さらに計算すれば、麺1玉に使われる量(145g)の特ナンバーワンは約28円という計算になる。

 ラーメン1玉200gでさらに全部特ナンバーワンを使うというのは結構ゼータクめに見積もった仮定だし、先ほども書いたとおり、政府売渡価格の変動は製粉会社がある程度かぶっている状態なので、本当はそれと同様の影響を末端(ラーメン屋)が受けることはないのだけども、まあそれでも同じだけの影響を受けたと仮定して、この価格から59%値上がりしたとしたら、値上がり金額は、

約28円×約60%=約16円

 となる。つまりこの数年の小麦価格の急騰は、ラーメン1杯の原価を(かなり多く見積もって)16円強押し上げることになったということ。

 ただし、この時期のラーメン店の値上げを小麦価格の高騰だけに求めては気の毒だ。

 この時期は原油価格の高騰から多くのものが値上がりした時期であり、東京都の統計だと2008(平成20)年8月にはガソリンの小売価格が最高値182円/リットルを記録している。
 燃料価格の高騰は様々な形で「原価」に跳ね返っていたのだ。



自動車ガソリンの東京都区部小売価格(一部)
総務省統計局「自動車ガソリン(銘柄符号:7301) の東京都区部の小売価格(昭和41年~最新月)」より


 だから実際、光熱費を含めて「原価」を構成する数多くの価格が上昇したと考えられる。

 経営上、この時期の値上げは多分にやむを得なかったと思わせる。

 しかしその後2008年9月にリーマンショックが起こり、それ以降の不況の中で消費者物価指数、企業物価指数は前年比マイナスが続き、今では再びデフレ懸念が囁かれるまでになった。
 また干ばつを乗り越えたオーストラリアの小麦の供給量も回復(「豪の小麦生産量、前年度比6%増に 予想を上方修正(日経ネット)」)し、小麦価格も落ち着いた。

 このように燃料その他、そして小麦価格といった「原価」はピークに比べて随分低くなったはずだが、少なくともこれまでのラーメン業界の常識として、一度値上がりした価格が下がったことはない。

 思えばバブル崩壊以降、ハンバーガー、牛丼と価格が下がっている中、ラーメンだけが(びっくりラーメンのような極端な「低価格路線」はあるにせよ)業界的な値下げという選択をしてこなかった。ということはラーメン業界はそれでやってこれたと言うことだ。

 実際、冒頭に紹介したアンケートでの、

1位800円までなら払う
2位1000円までなら払う
3位700円までなら払う
4位850円までなら払う
5位900円までなら払う
6位600円までなら払う
7位750円までなら払う
8位650円までなら払う
9位950円までなら払う
10位1200円までなら払う

 という結果は、これがどこの地方のものであれ、ハンバーガー、牛丼など他の「大衆食」に比べて「払ってもいい」単価はずいぶん高いように思う。ラーメンのお客さんは優しいのだ。この意味でラーメン業界は少し恵まれている。

 「100年に1度」という形容がなされたこの不景気の中、これからもラーメン業界だけがその(値下げ圧力の)影響受けずにいられるのかどうか、これはつまり需要と供給のバランスがどう推移するかということだけども、なかなか興味深い。

 このあたりに来年は注目しておきたい。

 いや、個人店とチェーン店をごっちゃにして話をしてはいけないか。
 ハンバーガーだってアメリカンダイナースタイルの店などはかなり単価の高いものを出しているわけだし。

 とはいえ、現実的にラーメン屋が勝負するのは同じラーメン屋ではなく、そのラーメン屋の近所の飲食店なのであって、例えばハンバーガーや牛丼は圧倒的にチェーン店が多いのだから、やっぱり直接的な競合相手はそちらになるはず。

 しかし値下げ圧力どころか、ラーメン業界ではラーメンよりもさらに客単価の高いつけ麺がブームになっている。

 だいたいどうしてつけ麺の方がラーメンより価格設定が上なのかがよくわからないが、この「ブーム」の中、そのあたりは有耶無耶なままなし崩し的に受け入れられている。

 どこそのコンサルが煽っていた(「つけ麺維新でつけ麺バブル」)とおり、つけ麺は店にとっても「おいしい」救世主なのだ。

 だからこそつけ麺にチャレンジする店はどんどん増えてくるし、チャレンジャーが多くなればダイヤモンドからクズまで、いろんなものが出てくる。もちろんクズの方が多いのは経験則からして事実だが、ダイヤモンドを待つにはクズにも目を瞑るべきなんだろう。

 というわけで来年もやっぱりつけ麺ブームは続くし、するとどうしてもこういう(「あほいち@浪速区」「つけ麺野郎@川西市」)店もたくさん出て来ちゃうんだろうというのが、私の予想。というか確信。

突然食いたくなったものリスト:

  • チキン南蛮

本日のBGM:
キャンディーラブになり過ぎて /チャゲ&飛鳥



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