ブタ箱の中でのより良い生活

 先日書いた「書こうと思って放ったらかしのネタ」というエントリのコメント欄でゆでめんさんと岡林信康についてお話ししてもらっている。

 お返事を書いていて、ちょっと前に別のところで岡林信康について書いたものがあったなぁ......と思い出したので、これを紹介しようと思う。

 コメントをくれた方の許可は取っていないが、コメント自体がとてもいいので一緒に紹介しちゃう。もし問題があれば御連絡下さい。削除します。m(_ _)m
(一応、コメントをくれた方の名前は仮名にします)

 きっかけとなったのは去年10月のこのニュース。

岡林信康36年ぶりの野音に3000人
 
 岡林信康(61)が20日、東京・日比谷野外音楽堂で、36年ぶりのライブを開いた。71年以来の野音には満員の約3000人が集い、岡林は「変わり者、嫌われ者、鼻つまみ者の吹きだまり」。フォークの神様、日本語ロックの提唱者と呼ばれた伝説の男は「放っといてもいいコンサートになりますから」と、独特のシニカルな表現で観衆の緊張をほぐした。
 
 ライブでは、故郷滋賀の地元音楽を取り入れた「江州音頭物語」から「山谷ブルース」まで歌い、約3時間のステージを披露。ステージ終盤には「(36年ぶり日比谷野音は)単なるスタートに過ぎない。来年は武道館でやらなきゃいけなくなった」などと話した。この日の公演の模様は、11月23日午前11時から、文化放送で放送される。
 
[2007年10月20日20時39分]

 これについて、私はこう書いた。

岡林が71年以来36年ぶりに野音でライブをしたそうだ。

しかしこれは先日の吉田拓郎と南こうせつのつま恋ライブとは全然意味が違うと思う。
いや、違うものであるはず。どちらも客は「団塊」の方々が中心だとは思うけど。

つま恋では客は「郷愁」にどっぷりと浸かっていられると思う。
岡林のライブではそういうわけにはいかなかったんじゃないだろうか。

この日のセットリストは知らないんだけど、きっと岡林は「私たちの望むものは」も「自由への長い旅」も「性と文化の革命」もやらなかったんじゃないかな。
失踪前の曲は、きっとやってない。

エンヤトット、エンヤトットと、延々やっていたのでは? 違うかな?
そうだとしたら、さて、ここに集まった人はどんな気持ちでそれを聞いていたんだろう。
きっと懐かしさなんて感じようがなかったんじゃなかろうか。
知ってる曲がないので。

でも、「懐メロ」になったプロテストソングほど情けないものはないのだし、岡林自身、そんなものはもう歌いたくないだろう。

あるいは「ジェームス・ディーンにはなれなかったけれど」(同じ26歳だった尾崎豊の死と自分の失踪を重ね、生きていられてよかったと歌っている)みたいな曲ってのは、客はどういう思いで聴くのだろう。

なんというかな、岡林は昔の曲をやらない分、聞く側にもこの36年の時の流れを問うような、そんなライブになるんじゃないかなあ。
ある意味、聴衆にもキツいかも。

私はやっぱり、あの時代、ステージ後の岡林に延々と討論に参加させた聴衆のその後の人生ってどうなんだと思うもの。
あのときにプロテストソングを歌ってた団塊さんは、つまり岡林を失踪にまで追いやった方々は、その後どういう日本を作ったんですかと。

岡林はノスタルジーや過去の栄光ではなく、「今」に生きている。
今度は岡林が、聴衆に「おまえらはどうなんだ?」と問う番だ。

だから岡林のライブは、つま恋と一緒になんかなっちゃいかんのだ。

 と書いて、このエントリに対して、以下のようなコメントがついた。(コメンターの名前は変えました)

赤レンジャー 2007年10月21日 02:45

初めまして。ちょっとコメントを。

岡林は1曲目「スチャラカ!」の後のMCで
「懐かしい歌もやります」宣言。
「ご安心下さい。ちゃんと弁えております」と続けて、
会場の大きな安堵の拍手を浴びておりました。

3部構成の1部はエンヤトット、2部が弾き語り、
3部がまたエンヤトット大会。

2部では「山谷ブルース」も「チューリップ」も
「自由への長い旅」もやりました。
いずれもなかなかしゃれたアレンジでした。

追憶の追体験に来た同世代の感傷にちょっと付き合いながら、
それでも現在を突きつける。

神様でした。


ひえたろう 2007年10月21日 03:42

赤レンジャーさん こんにちは。

ライブ、行かれたんですか。
詳しい御説明、ありがとうございます。

どうやら、「いい塩梅」だったようですね。

ところで失踪以降の曲の反応はどうだったんでしょうか。


デンジマン 2007年10月21日 09:51

ニュースから来ました。

赤レンジャーさんのコメント見て
ちょっと聞いてみたいような、
もういいような、複雑な気がしました。


赤レンジャー 2007年10月21日 11:42

おなじみの冗談交じりのMCの中で、岡林は
失踪・隠居から江州音頭、サムルノリとの出会いを経て
エンヤトットにたどり着くまでの歩みを振り返りました。
フォーク時代の岡林しか知らない聴衆に対して、
今の自分がどこにいるのかを教え、
「あんたたちの中にもエンヤトットの血は流れているはずだぜ」と
繰り返し訴えるようなMCでした。

で、聴衆はというと、さて、どうでしょう。
前乗り、手揉みの手拍子盆踊り大会のような雰囲気にとまどう客も、
これはこれで面白いと乗る客もいたでしょう。

フォークからロック、カントリーとスタイルを変えたディランに触れて、
「私との決定的な違いは、私の場合、表現スタイルを変えるたびに多くのファンを失っていったことです」
と笑わせる。
ここでの客の笑いは、果たして共感の笑いだったのか、それとも
かつて岡林を見限った自分を、36年を経て振り返る苦い笑いだったのか。

岡林を見に来た、という一点で共通はしていても、
今の自分たちがいかに互いにかけ離れたバラバラな場所にいるかを
みんなが感じた一夜だったのではないか。
客の大半を占める団塊世代より下の私はそう感じました。


ひえたろう 2007年10月21日 13:27

>デンジマンさん

「プロテストフォークの神様」を求めてしまうなら、やっぱり行かない方がいいのでしょうね。


>赤レンジャー さん

>岡林を見に来た、という一点で共通はしていても、
今の自分たちがいかに互いにかけ離れたバラバラな場所にいるかを
みんなが感じた一夜だったのではないか。

 あー、まさにそのとおりだったんでしょうね。
 バトルジャパンさんという方の日記に、この日のセットリストがありました。

スチャラカ!
エンヤトットでいきまSHOW
酒持ってこい
風の海峡
あらえっさっさ
江州音頭物語(上と順番曖昧)
御歌囃子ソーラン

休憩

山辺に向いて
山谷ブルース
チューリップのアップリケ
今日をこえて
自由への長い旅
26ばんめの秋
春を運ぶな雪の海
上林小学校校歌
流れ者

全ては恵みの雨になって
陽炎情話
虹の舟唄

アンコール
今夜は朝まで踊りましょ
らっせーら!

 このコンサートで「友よ」はあり得ないと思ってましたが、やっぱりやらなかったんですね。
 この歌とは一番遠いところに、今の聴衆はいるのでしょうから。
 やることよりもやらないことのメッセージの方が、重いですね。

 とかいいながら、もし


今ある幸せにとどまってはならない
まだ見ぬ不幸せに今旅立つのだ

 と歌ったとしたら聴衆はどう反応したのだろう、という興味もありはするのですが。

 実際に見に行った人からコメントをもらえて興味深かった。感謝。

 岡林はやっぱりリアルタイムの人だ。

突然食いたくなったものリスト:

  • ユッケ

本日のBGM:
堕天使ロック /岡林信康



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コメント(2)

ゆでめん :

このあいだ、この日比谷野音のコンサートをテレビでやってたの見ました。
BSだったかな。

音楽そのものは私のストライクゾーンから外れているので
正直、オモシロイところもあるネ程度だったのですが
ひえたろうさんもおっしゃっているように
>岡林はやっぱりリアルタイムの人だ。
と、思いましたし
飄々と演奏する彼を見ていて
岡林のファンやったことを誇りに思う、と強く強く感じました。

その誇りは、ひえたろうさん言うところの私達の世代の特権なのかもしれませんね。
今の子からしたら何やのこのオッさんでしょうけど。

ゲバラ、笑いました。確かにそうかも。

管理人 :

>今の子からしたら何やのこのオッさんでしょうけど。

「おまえらにわかってたまるかボケッ!」

でいいんですよ。(^O^)

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